フランク新監督の初記者会見:ソン・フンミンの去就はついに明らかになるのか?

フランク監督の新体制スタート:トッテナムの新たな挑戦
トッテナム・ホットスパーにトーマス・フランク新監督が就任し、クラブは新たな時代の幕開けを迎えている。デンマーク出身の51歳の指揮官は、7月18日に行われた初の記者会見で、チームの方向性について語った。フランク監督は「私たちは勇敢で非常にアグレッシブでありたい。そして攻撃的なフットボールを展開したい」と述べ、トッテナムの伝統的なモットー「To dare is to do」(敢えて行う)との親和性を強調した。
前任地のブレントフォードから大きく環境が変わったことについて、フランク監督は記者会見場の違いについてユーモアを交えながら言及しつつも、「非常に刺激的なチーム」「経験と才能ある選手の良いミックス」を持つトッテナムでの挑戦に意欲を示した。昨シーズンのヨーロッパリーグ制覇にもかかわらず、プレミアリーグでは17位という不本意な結果に終わったチームの立て直しが急務となっている。
ソン・フンミンの契約状況:複雑な将来への道筋

ソン・フンミンの契約状況は、トッテナムファンにとって最大の関心事となっている。クラブは2025年1月7日に延長オプションを行使し、韓国代表キャプテンの契約を2026年夏まで延長したことを正式に発表した。しかし、これは「移籍金を保護するため」の措置とも解釈され、32歳となったソンの長期的な将来については依然として不透明な状況が続いている。
現在のソンは、2015年8月のトッテナム加入から10シーズン目を迎えており、公式戦454試合出場で173ゴール101アシストという素晴らしい記録を残している。2020年のFIFAプスカシュ賞受賞、2021-22シーズンのプレミアリーグ得点王(モハメド・サラーと同率23ゴール)など、個人的な栄誉も数多く獲得してきた。昨シーズンはキャプテンとしてヨーロッパリーグ制覇に貢献し、トッテナムに18年ぶりのタイトルをもたらした功労者でもある。
移籍憶測と新監督の評価:フランク監督の慎重なアプローチ
フランク監督は、ソン・フンミンの将来について慎重な姿勢を示している。Football Londonのアレスデア・ゴールド記者によると、「フランク監督としてはソンがどのような選手かを直接確認してから決定したいと考えているだろう」と報じられている。7月12日にチーム練習に合流したソンは、すでに新監督と将来の役割について話し合いを行った可能性が高いとされている。
移籍市場では、サウジアラビアの複数クラブ、アメリカのMLS、さらには古巣の恩師ジョゼ・モウリーニョが率いるフェネルバフチェ(トルコ)などが関心を示していると報じられている。しかし、ソンの移籍が実現する場合でも、クラブの重要な収益源であるアジアツアー終了後になる可能性が高いと英BBCが伝えている。韓国代表の象徴的存在であるソンの存在は、現地ファンにとって不可欠であり、ツアーの商業的成功にも直結するためだ。
プレシーズンでの試金石:レディング戦での起用法
7月19日に行われたレディングFC戦は、フランク監督にとって初の公式戦となった。この試合でソン・フンミンがどのような役割で起用されるかが注目を集めていたが、監督は試合前の会見で「前半はソンがキャプテンマークを着用し、後半はクリスティアン・ロメロが着用する予定」と明かしていた。この采配は、フランク監督がまだチームの長期的なキャプテンシーについて最終決定を下していないことを示唆している。
トッテナムは今夏、計5試合のプレシーズンマッチを予定しており、レディング戦の後は7月26日にルートン・タウンと対戦し、その後アジアツアーに出発する。7月31日には香港でアーセナルとの初の海外ノースロンドン・ダービーを戦い、8月3日にはソウルでニューカッスルと対戦する予定となっている。これらの試合を通じて、フランク監督はソンの現在のコンディションとチーム内での位置づけを慎重に評価していくものと見られる。
チーム補強と戦術的変化:ソン後を見据えた準備
トッテナムは今夏の移籍市場で積極的な補強を行っており、特にソン・フンミンと同じポジションの選手獲得に力を入れている。昨シーズン期限付き移籍だったマティス・テルの完全移籍を決定し、7月11日にはモハメド・クドゥスの獲得も発表した。両選手とも攻撃的ウイングとして起用可能で、ソンの潜在的な後継者候補と目されている。
さらに注目すべきは、日本代表DF高井幸大の獲得だ。プレシーズン期間中は背番号81を着用する予定の高井は、チームの国際化戦略の一環としても期待されている。一方で、トッテナムが三笘薫(ブライトン)にも関心を示しているという報道もあり、ウイング陣の大幅な刷新が計画されている可能性が高い。これらの補強は、ソンの退団を前提とした準備とも解釈できる状況となっている。
ファンの心境と文化的影響:アジアでの特別な存在
ソン・フンミンはトッテナムにとって、単なる選手以上の存在として位置づけられている。特にアジア市場におけるクラブの影響力拡大に大きく貢献しており、韓国代表の象徴的存在として現地ファンから絶大な支持を受けている。昨年のアジアツアーでも、ソンの登場には熱狂的な声援が送られ、「Sonny愛してる!」「オッパ愛してる!」といった声がスタジアムに響いた。
この文化的影響力は、トッテナムの商業戦略において極めて重要な要素となっている。プレミアリーグクラブにとって夏の海外ツアーは重要な収益源であり、ソンの存在はトッテナムの商業的魅力の中核を成している。ツアー中のイベント出演なども契約に含まれており、クラブはその履行義務を負っているため、仮に移籍が実現する場合でもツアー終了後になる可能性が高いとされている。ファンにとってもソンの去就は感情的な問題であり、10年間の献身的な貢献に対する敬意と愛着が複雑に絡み合っている。
今後の展望:新時代への橋渡しか、それとも継続か
トーマス・フランク監督の就任は、トッテナムにとって重要な転換点となる可能性が高い。昨シーズンのヨーロッパリーグ制覇という成功を継承しながら、国内リーグでの競争力向上が急務となっている。フランク監督の攻撃的で高プレッシングなサッカーは、ソンの特性に合う可能性もあるが、33歳という年齢を考慮すると体力的な負担も懸念される。
ソン・フンミンの最終的な去就決定は、今後数週間で明らかになる見込みだ。地元メディアの報道によれば、フランク監督はソンの身体的状態や全体的なパフォーマンスを評価した後、オープンな対話を行う意向を示している。7月19日のレディング戦を皮切りに始まるプレシーズンが、ソンにとって新監督へのアピールの場となり、同時にフランク監督にとってもソンの現在の能力を見極める重要な機会となる。トッテナムファンにとって、この夏は愛すべきキャプテンとの別れか、それとも新たな挑戦の継続かを決める歴史的な転換期として記憶されることになるだろう。