ナ・サンホ、日韓戦ショック敗戦も「後半はハーフコート試合→負けたが内容は圧倒的だった」

衝撃的な敗戦、それでも希望を見出した試合
2025年7月15日、龍仁ミルスタジアムで行われた東アジア選手権最終戦で、韓国代表は日本に0-1で敗れた。18,418人の観客が詰めかけたこの試合で、韓国は前半8分にジャーメイン・リョウに先制点を許し、最後まで追いつくことができなかった。これで韓国は日本戦3連敗という不名誉な記録を作ることになった。
しかし、この敗戦の中でも希望的な要素を見出したのが、2年ぶりに代表復帰を果たしたナ・サンホ(町田ゼルビア)だった。前半7分にはゴールポストを叩く惜しいシュートを放ち、左サイドからの積極的な攻撃参加で存在感を示した。試合後のミックスゾーンでナ・サンホは「今日の試合では無力だったというより、我々が圧倒する試合運びを見せた。結果的には残念だが、内容面では我々がよくやったと思う」と語った。
この敗戦により韓国は準優勝に終わったが、ナ・サンホの分析は単なる慰めではなく、韓国サッカーの進歩を示唆する重要な観点を提供していた。特に彼のJリーグでの経験が、この試合の戦術的な読み解きに大きく貢献していた。
Jリーグ経験が生んだ戦術的洞察

町田ゼルビアでプレーするナ・サンホは、Jリーグでの経験を通じて日本サッカーの特徴を深く理解していた。「Jリーガーは細かいプレーが非常に上手い。戦術的にチームプレーが良い」と分析し、今回の日韓戦でも韓国選手たちがそれらの長所を発揮したと評価した。
特に注目すべきは、ナ・サンホが指摘した「後半のハーフコート試合」という表現だった。これは韓国が後半戦で日本陣内に押し込んで攻勢を強めた状況を指しており、従来の韓国サッカーとは異なる戦術的成熟度を示していた。「Kリーグ選手も十分に自分たちの強みを持っており、Jリーグに劣らない特有の長所をよく見せた」という彼の言葉は、韓国サッカーの競争力向上を物語っていた。
ナ・サンホは日本代表選手の多くと対戦経験があり、同じチームでプレーした選手もいるため、相手の長所と短所を熟知していた。「今日の試合でも代表チームの同僚たちにその部分をよく話してあげた。その弱点をよく突いたと思う」と語り、Jリーグ経験が戦術的アドバンテージとなったことを明かした。
過去の敗戦との決定的な違い
ナ・サンホが最も強調したのは、今回の敗戦が過去の日本戦敗戦とは質的に異なるという点だった。「実際、2022年東アジア選手権で0-3で敗れた時は残念だった。当時は無力に試合に負けた。しかし今日の試合は無力だったというより、我々が圧倒する試合運びを見せた」と振り返った。
この違いは単なる精神的な慰めではなく、韓国サッカーの戦術的進歩を示す重要な指標だった。2022年の東アジア選手権では韓国は日本に0-3で完敗し、内容面でも劣勢が明らかだった。しかし今回は、結果こそ0-1の敗戦だったものの、試合の流れや内容面では韓国が優位に立つ場面が多かった。
特に後半戦では韓国が日本を押し込む展開が続き、ナ・サンホの言う「ハーフコート試合」が実現された。これは韓国選手たちが日本の守備ブロックを崩すための組織的な攻撃を展開できていたことを意味し、戦術的な成熟度の向上を示していた。ナ・サンホは「結果的には残念だが、内容的な面では我々がよくやったと思う」と自信を示した。
KリーグとJリーグの競争力比較
Jリーグでプレーするナ・サンホならではの視点で、KリーグとJリーグの違いと共通点を分析した。「Jリーグには細かいプレーがよく行われ、戦術的によく整った チームが多い」と日本サッカーの特徴を認めつつも、「Kリーグ選手も十分に長所があるため、Jリーグに劣らない」と韓国サッカーの競争力を強調した。
この比較は特に意味深いものだった。なぜなら今回の日韓戦は実質的に「KリーグオールスターvsJリーグオールスター」の構図だったからだ。韓国は海外組の参加が困難な中、Kリーグ選手中心のチーム編成となり、日本は全選手がJリーガーで構成された。この状況で韓国が内容面で互角以上の戦いを見せたことは、Kリーグの水準向上を示していた。
ナ・サンホは「日本に行く前までは1対1突破が多かったが、Jリーグに行ってからは連係プレーで発展している」と自身の成長を語り、同時に韓国選手全体の戦術的進歩を示唆した。彼の分析によれば、韓国選手たちは従来の個人技重視のスタイルから、組織的な連係プレーを重視する方向に進化していた。
代表復帰への切実な思いと今後の課題
2年ぶりの代表復帰を果たしたナ・サンホは、今回の東アジア選手権に対する特別な思い入れを明かした。「いつも代表チームに選ばれるために努力し、また切実に準備してきた。そのため今回の東アジア選手権でも選出されることができたと思う」と語り、代表復帰への努力を振り返った。
特に印象深かったのは、「東アジア選手権が最後の代表チームになるかもしれないという思いで臨んだ」という発言だった。これは30歳を迎えるナ・サンホの切実な心境を表しており、韓国サッカー界の激しい競争を物語っていた。「結果的には残念だが、それでもその中で私ができること、やりたいことを全て見せることができたので後悔はない」と満足感を示した。
今後の課題について、ナ・サンホは「1対1突破や空間への浸透、チーム同僚のために空間を作ってあげるプレーと共に、アシスト、シュートなどが補完されれば、代表チームでもっと競争力を発揮できると思う」と具体的な改善点を挙げた。これらの発言は、個人的な野心だけでなく、韓国サッカー全体の発展への貢献意識を示していた。
韓国サッカーの未来への示唆
ナ・サンホの分析と今回の日韓戦は、韓国サッカーの未来に重要な示唆を与えていた。彼の「内容面では日本を圧倒した」という評価は、単なる負け惜しみではなく、韓国サッカーの戦術的進歩を示す重要な証拠だった。特に後半戦の「ハーフコート試合」は、韓国がより組織的で洗練された攻撃を展開できるようになったことを意味していた。
しかし同時に、日本サッカー界からは厳しい評価も聞かれた。日本の元代表選手は「勝ったが遺憾。粘り強い守備は素晴らしかったが、選手交代で流れを変えるのも困難だった。確実に後半は韓国に主導権を握られて引きずられた」と分析し、韓国の内容面での優位性を認めていた。
この状況は韓国サッカーにとって希望的な要素だった。結果的には敗戦だったものの、戦術的な成熟度と競争力の向上は明らかであり、ナ・サンホのようなJリーグ経験者の増加がその要因の一つだった。今後も韓国選手たちが海外リーグでの経験を積み、そのノウハウを代表チームに還元していけば、日本との競争力格差はさらに縮小すると期待される。ナ・サンホの前向きな分析は、韓国サッカーの明るい未来への道筋を示していた。